テキサス州フリスコの「Kinzo Sushi(キンゾー・スシ)」で江戸前の技を磨くレオ・ケコア氏。毎日豊洲から届く魚と日本の器を軸に、海外の地で和食を表現する彼の仕事には、確かな信念が息づいている。

ハワイの原点から一つ星の名店へ

ダラス北部に位置する郊外都市フリスコにあるKinzo Sushi(キンゾー・スシ)は、毎日、豊洲市場から空輸された魚を使い、十八品の omakase(オマカセ)コースを提供する寿司店。白い菊皿に映えるイクラ、黒皿に際立つ握り、ターコイズブルーの鉢の上で仕上げられる魚ときのこ。繊細な盛りつけが並ぶカウンターは、地元で人気の店として知られている。

その中心に立つのが、オーナーシェフのレオ・ケコア氏。

ケコア氏にとって寿司は原点である。ハワイで祖父の寿司店を手伝い、米を炊き、野菜を切り、魚をさばく日々を通して料理の基礎を身につけた。しかし、縛られたくないという思いから祖父と約束を交わし、自由に過ごす十年間を与えてもらった。彼は寿司から離れ、韓国の音楽業界でプロデューサーとして活動。仕事で日本を訪れることも多く、各地で食べ歩きながら、料理への関心を失うことはなかった。

料理の世界に戻ると決めた後、ケコア氏はミシュラン一つ星を持つ「Nobu Dallas(ノブ・ダラス)」へ。八年間在籍し、スピード、仕込みの重要性、チームを率いる姿勢を学んだ。「午後二時から給料が出るのに、三年間、正午から練習していました。Nobu は寿司界のハーバードのような場所です」と振り返る。昇格の道が開けていたものの、自分のやり方を貫くため、独立して Kinzo Sushi を開いた。

江戸前を今に生かす技法

Kinzo Sushi の軸となるのは江戸前の考え方だ。ケコア氏は「江戸時代、江戸湾で獲れた魚を塩や酢、醤油で合わせていた。その味の構造を現代に置き換えています」と語る。現在も店で扱う魚の多くは東京湾で獲れたものだ。

江戸前の核心は二つあるとケコア氏は説明する。一つは魚の季節性を理解すること。旬の前後で変わる香りや脂に合わせ、用いる塩や酢を調整する。もう一つはシンプルであること。レモン、塩、醤油、酢という基本の四つを軸にしつつ、それぞれ複数の種類を組み合わせ、魚の状態や温度に合わせて味を組み立てる。ひとつのコースで四から六種類の塩、六から七種類の醤油を使うこともあるという。

海を隔てたテキサスでも、江戸前の思想を基盤とした寿司が確かな形となり、店の料理を支えている。

Kinzo Sushi の料理

器と物語がつなぐ「もてなし」

ケコア氏にとって、料理を構成するもう一つの重要な要素が器である。「器は、料理の印象の決め手になります。どこで作られたのか、どんな背景があるのかを知ることが大切なんです」と語る。MUSUBI KILN の器を選ぶ理由も、技と物語に惹かれるからだという。

「料理を特定の器に盛りつけることで、その背景も含めて一つの世界観が生まれる。MUSUBIの器は、ミシュランレベルの安定したクオリティだと感じています。」

店が郊外に位置することを踏まえ「MUSUBI KILN の器は、フリスコで私たちが存在感を示す大きな助けになりました」とも話す。

「同じ盛りつけを繰り返すのは、どこかずるをしている気がするんです」と笑いながら、ケコア氏は自身の盛りつけの考え方を例に挙げて説明する。白身魚には色を添える伝統的な皿、ホタテには水色を帯びた皿、生牡蠣には金色のスプーンを使い、氷の上に置く。一品ごとに必然性を探り、食材に合わせて器を選ぶ姿勢がある。黒い丸皿や正角皿、赤・金・青の小鉢は特に人気が高く、料理の世界観を広げている。

料理と音楽はケコア氏の中で自然と結びついている。「オマカセのコース料理は小さなコンサートのようなものです」。器選びにもリズムや間合いの感覚があり、音楽が感情の理解を深め、接客にもつながっているという。

MUSUBI KILN の器に盛られた料理

懐石料理への新たな挑戦

ケコア氏はさらに新しい挑戦に踏み出す。テキサス州プレイノにオープンする「Ichika(イチカ)」は、天ぷらや握りなどを組み合わせた割烹スタイルの会席料理を提供する予定である。背後には焼き場、前には寿司を握るカウンターがあり、お客様の目の前で料理が仕上げられていく。「伝統的な味のバランス」を重視した構成で、開業前にもかかわらず、四か月先まで予約が埋まっている。

器が広げるアメリカでの和食の舞台

メニューとストーリー、空間とつながり。そのすべてが重なり合い、ケコア氏の仕事はテキサスで確かな存在感を放ち続けている。日本の職人が生み出した器は、シェフの技によって魅力を引き出され、料理とともにお客様の味覚と心へと届けられていく。


店舗情報

Kinzo Sushi(キンゾー・スシ) 元Nobuシェフのレオ氏とカイル氏が手がけ、2022年に北フリスコにオープンした日本料理店。おまかせ寿司をはじめ、手巻き、焼き鳥など、多彩なメニューを楽しめる。 14111 King Rd, Suite 2200, Frisco, TX 75036

※ Kinzo Sushi の器の一部は、ケコア氏と Musubi Lab で選び、テキサスまでお届けしています。